~公立高校の入試制度[後編]~ 今後の方向性

自身が在住する都道府県の入試制度を一般的だと捉えがちですが、合否の判断の対象となる項目への配点(比重)においても、都道府県毎に大きな差があります(参照『~公立高校の入試制度[前編]~ 都道府県別の傾向』)。

ちなみに、ひまわりオンライン個別塾がある京都府では、一般入試(中期)の配点・比重は下記のようになっています。

京都府の一般選抜制度の配点と比重~

  1. 一年生の調査書(内申)の評定:65点(16%)
  2. 二年生の調査書(内申)の評定:65点(16%)
  3. 三年生の調査書(内申)の評定:65点(16%)
  4. 学力検査(テスト)の成績:200点(52%)

主要な都道府県の入試制度と比較して、一年生二年生の調査書の占めるウエイトが大きく、学力検査の占めるウエイトが小さいという特徴があります。

新中学一年生の生徒さんには「一年生の内申も公立高校入試に影響するから、スタートダッシュにちからを入れましょうね」とアドバイスいたしますが、そのようなアドバイスがそもそも必要のない都道府県も少なくないというのは、(京都在住者からすると)ある意味新鮮です。

ここでは、都道府県の現行の入試制度(配点比重)を比較しながら、今後の入試制度の方向性についても考察してみたいと思います。

主要な都道府県の各項目の配点・比重の平均値(%)は以下のようになっています。

  1. 一年生の調査書の評定:5%
  2. 二年生の調査書の評定:5%
  3. 三年生の調査書の評定:22%
  4. 学力検査の成績:65%
  5. その他:3%

主要な都道府県のなかで、平均値の配点比重に最も近い入試制度を実施している都道府県は、今年(2023年)入試制度を改定した広島県だと言えそうです。

北海道大阪府のように一年生二年生の調査書の評定を判定に加味する都道府県と、東京都愛知県のように一年生二年生の調査書の評定を判定に(概ね)加味しない都道府県があります。

中学生の学習が小学生時代の学習の延長にあることを踏まえると、前者は、生徒が元々持っている(小学生時代に培った)学習能力も(限られた範囲ながら)評価の対象に加えていると言えるのかもしれません。

一方、後者は中学校時代の学力の伸長度(頑張り)をより重視していると言えるでしょう。

各都道府県の学力検査と調査書(内申)他の配点割合は下記のようになっています。

  • 北海道 学力検査:調査書=6:4
  • 宮城県 学力検査:調査書=7:3 
  • 東京都 学力検査:調査書=7:3
  • 愛知県 学力検査:調査書=5.5:4.5
  • 大阪府 学力検査:調査書=5:5
  • 広島県 学力検査:調査書:自己表現=6:2:2
  • 福岡県 学力検査:調査書=9:1
  • 全国平均 学力検査:調査書(ほか)=6.5:3.5

調査書の評定を(比較的)重視している大阪府愛知県に対して、東京都福岡県は学力検査(テスト)の成績を重視しています。

調査書は、知識や技能、定期テストの点数はもとより、学びに向かう姿勢や積極性なども評定の対象となります。

つまり前者は日々の努力や積み重ね(暗記力やコミュニケーション能力、協調性)をより重視しているとも言えます

他方、学力検査の成績を重視する後者は、3年生の2月3月時点の正味の学力(応用力や解答力)をより重要視していることになります。

また、入試の直前ぎりぎりまで挽回する余地が多い入試制度となっているのも後者の特徴です。

今年改定された広島県の入試制度を参考にしながら、今後の入試制度の方向性について考察してみたいと思います。

前述の通り、改定の結果、広島県の入試制度(配点・比重)は、全国の平均値にとても近いものとなりました。

ここでは変更点をみっつに絞り、その内容を細かく見ていきましょう。

変更点① 学年間の調査書(内申)の比重の見直し

これまで、調査書評定の比重は「一年生:二年生:三年生=1:1:1」となっていましたが、今回の改定で「一年生:二年生:三年生=1:1:3」へと見直され、結果、三年生の調査書評定がウエイトを増すこととなりました。

東京都や愛知県等の入試制度(配点比重)に近付いたかたちとなります。

変更点② 学力検査の比重の見直し

これまで評定の配分は「学力検査:調査書=1:1」となっていましたが、今回の改定で「学力検査:調査書:自己表現=6:2:2」へと見直されました。

学力検査の比重が50%から60%へと10%増加したことになります。

東京都や福岡県等の入試制度(配点比重)に近付いたかたちとなります。

変更点③ 自己表現の新設

「自己を認識し、自分の人生を選択し、表現することができる力」を測る試験で、記述と面接に分けて実施されます。

高校生の先の社会人像をも見据えた実践的な課題となっています。

今回の入試方式の改定は、

  • 一年生二年生の調査書評定よりも三年生の調査書評定を重視
  • 調査書よりも学力検査(テスト)を重視

という大きくふたつの方向性に要約できます。

これは、「プロセスよりも結果」「暗記力よりも応用力」に評価の力点を寄せるもので、今後他の都道府県でもその流れが強まるものと予想されます。

上述のように都道府県毎に入試制度は様々です。自県の入試制度と他県の入試制度を比べてみるのも、なかなか興味深くあります。

とはいえ、受験生にとっては人生で一度限りの大切なチャレンジです。

在住する都道府県の入試制度(配点・比重)をよく知り、それを踏まえた効果的な学習で、志望校合格を手にしていただきたいですね。

【この記事は2023/5/1掲載記事の再掲です】